Parosmia 2
8月のこと、しばらくワインから離れていました。
日本酒を試したら、旨味成分は味わえても吟醸香はまったく分からず、ただ不快な飲み物をのどに通しただけになってしまいました。
国産大手ビール会社の製品でも、異臭が本来の香りを打ち消しました。
残念なことに。
このタイミングで出会ったのが、よなよなエールビールでした。
不思議なことに、どの製品からも石油の匂いを感じませんでした。
しばらくこれでいけばいいぞとほっとして二度つづけたら、食事の余韻に退屈しました。
すばらしい飲み物だとは思うのですが、ゆっくり二時間、三時間かけて楽しむ食事には似合わない気がしました。
エールビールの体験は、そういうくつろいだ週末の食事が自分にとって大きな意味をもっていたと気づかせてくれる機会でした。
先週末は、久しぶりにニュイのプルミエ・クリュを開けてみました。
たしかに例の異臭はしつこく鼻腔に張りついてくるのですが、果実香や大地のニュアンスはよくわかります。
ワインの複雑さや上質さもはっきりと。
ところが分析的にのぞんでみると、感じられる香りの総数がこれまでより少なく、石油香に圧倒されその陰に隠されてしまったた香りも多そうだと測ることができました。
しかし異臭のないエールビールよりも、多少の異臭には眼をつむり、代わりに得られるワインの余韻の充実感の方をとりたいと感じたのです。
驚きました。
ブショネはすべての香りを抑えてなお異臭を加えますが、異臭症では正常に感じられる香りも多いのが救いなのでしょうか。
ましだ、と判断する感覚には理論も理性も介在する余地はなく、大脳辺縁系の領域に属する本能的欲求の範疇なのかもしれません。
嗅覚は古い脳で識別されるようですので。
皮質に刻まれている、これまでの香りの体験が影響していることも確かでしょうが。
ちょっと大袈裟でした。
さて、まともな話しも少し加えます。
嗅覚障害については金沢医科大学耳鼻咽喉科教授の三輪先生がお書きになった論文や学会発表の論旨がとても参考になりました。
その他、Franselli、 Portier、 Bonfils、 Landis、 Neundorferらの文献も参照しました。
<嗅覚について>
嗅覚は五感の一つに数えられます。
匂いはどこで感じるのでしょう。
鼻腔の上壁から鼻中隔、上鼻甲介(鼻腔の奥の小さな骨)にかけての粘膜は、肥厚した嗅上皮という特殊な組織で覆われています。
嗅覚は、嗅上皮の中にある嗅細胞で受容され、匂いとして感受されるる化学的感覚です。
嗅細胞は神経細胞に由来する感覚細胞です。
一般に神経細胞は再生しないと言われていますが、嗅細胞は生涯保存されるわけではなく、損傷すると新たな細胞と入れ替わります。
常に脱落と新生をくり返し、炎症などで障害されても新たな再生が起こっているのです。
マウスの実験では、損傷を受けた嗅細胞は約4週間で再生するようです。
<嗅覚障害>
嗅覚障害は発生する部位により、①呼吸性、②嗅粘膜性、③末梢神経性、④中枢性に分けられます。
このうち呼吸性嗅覚障害は、鼻や副鼻腔の異常により匂いの分子が嗅粘膜まで到達しないために発症するもので、そこまでの気流を回復させれば治癒します。
それ以外の嗅覚障害は、一般に神経性嗅覚障害と呼ばれています。
嗅粘膜性嗅覚障害は嗅細胞の障害によるものであり、そのほとんどを感冒罹患後の嗅覚障害が占めています。
まだ先は長くなりますので、今日はここまでにします。
実は9月中旬からつかいはじめた漢方薬が効いたためなのか、私の症状はほんの少し軽快してきました。
つづく
日本酒を試したら、旨味成分は味わえても吟醸香はまったく分からず、ただ不快な飲み物をのどに通しただけになってしまいました。
国産大手ビール会社の製品でも、異臭が本来の香りを打ち消しました。
残念なことに。
このタイミングで出会ったのが、よなよなエールビールでした。
不思議なことに、どの製品からも石油の匂いを感じませんでした。
しばらくこれでいけばいいぞとほっとして二度つづけたら、食事の余韻に退屈しました。
すばらしい飲み物だとは思うのですが、ゆっくり二時間、三時間かけて楽しむ食事には似合わない気がしました。
エールビールの体験は、そういうくつろいだ週末の食事が自分にとって大きな意味をもっていたと気づかせてくれる機会でした。
先週末は、久しぶりにニュイのプルミエ・クリュを開けてみました。
たしかに例の異臭はしつこく鼻腔に張りついてくるのですが、果実香や大地のニュアンスはよくわかります。
ワインの複雑さや上質さもはっきりと。
ところが分析的にのぞんでみると、感じられる香りの総数がこれまでより少なく、石油香に圧倒されその陰に隠されてしまったた香りも多そうだと測ることができました。
しかし異臭のないエールビールよりも、多少の異臭には眼をつむり、代わりに得られるワインの余韻の充実感の方をとりたいと感じたのです。
驚きました。
ブショネはすべての香りを抑えてなお異臭を加えますが、異臭症では正常に感じられる香りも多いのが救いなのでしょうか。
ましだ、と判断する感覚には理論も理性も介在する余地はなく、大脳辺縁系の領域に属する本能的欲求の範疇なのかもしれません。
嗅覚は古い脳で識別されるようですので。
皮質に刻まれている、これまでの香りの体験が影響していることも確かでしょうが。
ちょっと大袈裟でした。
さて、まともな話しも少し加えます。
嗅覚障害については金沢医科大学耳鼻咽喉科教授の三輪先生がお書きになった論文や学会発表の論旨がとても参考になりました。
その他、Franselli、 Portier、 Bonfils、 Landis、 Neundorferらの文献も参照しました。
<嗅覚について>
嗅覚は五感の一つに数えられます。
匂いはどこで感じるのでしょう。
鼻腔の上壁から鼻中隔、上鼻甲介(鼻腔の奥の小さな骨)にかけての粘膜は、肥厚した嗅上皮という特殊な組織で覆われています。
嗅覚は、嗅上皮の中にある嗅細胞で受容され、匂いとして感受されるる化学的感覚です。
嗅細胞は神経細胞に由来する感覚細胞です。
一般に神経細胞は再生しないと言われていますが、嗅細胞は生涯保存されるわけではなく、損傷すると新たな細胞と入れ替わります。
常に脱落と新生をくり返し、炎症などで障害されても新たな再生が起こっているのです。
マウスの実験では、損傷を受けた嗅細胞は約4週間で再生するようです。
<嗅覚障害>
嗅覚障害は発生する部位により、①呼吸性、②嗅粘膜性、③末梢神経性、④中枢性に分けられます。
このうち呼吸性嗅覚障害は、鼻や副鼻腔の異常により匂いの分子が嗅粘膜まで到達しないために発症するもので、そこまでの気流を回復させれば治癒します。
それ以外の嗅覚障害は、一般に神経性嗅覚障害と呼ばれています。
嗅粘膜性嗅覚障害は嗅細胞の障害によるものであり、そのほとんどを感冒罹患後の嗅覚障害が占めています。
まだ先は長くなりますので、今日はここまでにします。
実は9月中旬からつかいはじめた漢方薬が効いたためなのか、私の症状はほんの少し軽快してきました。
つづく
by musignytheo
| 2013-09-25 19:50
| essay
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Wine and Roses, Dalmatian and Labrador.
by musignytheo
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