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BISTRO Mille Printemps

 勝沼にある「ビストロ・ミル・プランタン」さんへ行ってきました。

 オーナーの五味さんは、銀座レカン(和光のとなり三越の前の歩道脇におごそかにメーニューがに掲げられている、あの店)で長年シェフソムリエをつとめ、またワイン専門誌「ワイン王国」にコラムをもっていらっしゃる日本でも屈指のソムリエさん。お店を持った現在も定期的に田辺由美ワインスクールの講師もなさっているようです。

 レカン時代、伺うたびにばかなことをしでかす私に、けっして恥をかかせず、いつもスマートにフォローしてくださったこと、いまでも忘れがたく思っています。

 「ビストロ・ミル・プランタン」は、その五味さんが満を持して、昨年の7月にはじめられたお店です。
 壁のレンガの雰囲気、いいですね。
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 お店のアプローチに一歩踏み入れた瞬間、彼はいつものよく通るフレンドリーな声と笑顔で迎えてくれました。
 手に持っていた傘はさっと傘立てに。窓際の予約席に案内してくださるまでのさりげない所作のすばらしいこと。
 服装はジーンズにお洒落な半袖のユニホームとカジュアルな雰囲気なのですが、身のこなしは、「レカン」そのままです。
 直前までひどい雷雨だったそうで、その様子を伝える奥様の親しみやすい会話にも好感がもてました。
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 「ビストロ・ミル・プランタン」さんは二回目。
 前回はワイン会への参加でした。
 その際は、有楽町「アピシウス」のシェフソムリエ、情野さんとのコラボレーションで、ワイン対決と銘打ってお二人がそれぞれ用意したワインをブラインドでサーヴして、客にどちらがよかったか決めさせるという面白い企画。
 レアワイン続出の、でも和気あいあいとしたとても楽しい企画でした。


 さて、オーナーご夫妻との会話を楽しみながら、手渡されたディナーのメニューに目を通します。
 テーブルからは勝沼のブドウ畑が見下ろせ、沈みゆく夕陽が楽しめます。緑濃いブドウの葉が見渡すかぎりつづく景色は、ここならでは。心洗われる眺望です。
 シェフの深澤さんは、フランス各地で15年間修行されたフランス料理を熟知した方だそう。
 前菜8種、主菜8種くらいからの選択です。
 皿がきまったら、いよいよ。。。

 ワインリストをお願いし、拝見。
 山梨県産のワインの品揃えは圧巻。恐らくこのお店以外では望めないものでしょう。
 国産以外のワインも、すべてCP良好。250種以上のストックをお持ちのようで、ビストロとしてはかなり潤沢です。またオーナーとっておきのマニア垂涎のフランス・ワインもありました。

 ここでは山梨県産の食材と甲州ワインのマリアージュを楽しむのが正道といえるでしょう。グラスワインやその飲み比べセットなどが豊富で、気軽に何種類ものワインがいただける。オーナーの広い見識に寄り添い、山梨のワインの魅力を発見する最高の道しるべになるお店だと思います。

 ところが私は、ちらっと見たとあるワインの名前に目がくらんでしまいました。
 いつか一度は飲んでみたいと思っていたけれど、まったく手が出なかった逸品。
 楽天などのモールでは10万円以上の値段がついているワインが、その三分の一以下で飲めるよう。
 こういう外道はお勧めできませんが、そういう要望をも満たしてくれる幅の広さを兼ね備えたお店なのです。



1997 Chambolle-Musigny Amoureuses, Domaine G. Roumier

 今日のコメントは、実際に五味さんにお願いしてテイスティングしていただいたもの。 
 いつもの私のいい加減なのとは違います!
 
 トパーズ色がかったルビー色。澱はやや多め。
 カシスのリキュール、グリオットのコンフィ、梅の実。腐葉土の香りが豊か。マデラのニュアンスをもつ。鼻にすずしく抜けるミントのような芳香。大地のニュアンスにあふれる。
 タンニンはきめ細やかで甘ささえ覚える。酸も魅力的。アフターにいやな苦味がまったくないのは良い熟成を経た証拠。いまも本当にすばらしいが、まだこの先の長命が期待できる。うん、いいですね。
 私は五味さんにもこの「恋人たち」という名をもつ大看板にも気がひけて、正直なところはじめ良さを理解できなかったのですが、時間とともに徐々に引き込まれてゆきました。
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 「シェアーされてはいかがですか、取り皿をご用意します」とご主人。
 いろいろ味わってみたいという客の気持ちをよくご存知のようです。そうすることをお願い。まず運ばれてきたのが、自家製薫製盛り合わせ、「牛君、鴨君、鹿君」。
 牛肉はやわらかくとろけるような旨味があります。鹿肉、まったく臭みはなくコクがあって味わい深い。鴨は脂がのって美味。そしてスモークサーモンの美味しいこと。いずれもフレッシュな味わいで、自家製ならではです。また、付け合わせの野菜がおいしいのも特筆に値します。これはすべての料理にあてはまりました。
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 「フォアグラのポワレ 黒トリュフのソース」
 たっぷり厚いフォアグラの下に火を通したリンゴが敷いてあります。ソーズは黒トリュフが効いた濃厚なもの。マリアージュ最高です。
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 いただいている間にも、ご主人の目は行き届いています。
 この夜は三組の客がいましたが、ワインが少なくなると、どこからともなく現われてさっとつぎ足してくださる。皿が空けば、自然に下げられる。上着を脱ごうとしたら、一陣の風のごとく現われて、すっと手が伸びる。絶妙のサーヴィスです。
 目が行き届く、きめ細やかだというのは、じつは神経質という弊害と紙一重です。ところがご主人の所作はきわめて男性的で、切れがよい。そつもない。だから心からくつろげる。こういうサーヴィスを一流というのでしょう。
 ご主人が他のお客をサーヴィスしている際には、奥様が現われて楽しいお話を。一生懸命さが伝わってくるチャーミングな方です。
 ミル・プランタンはフランス語で、千と春という意味。奥様のお名前が千春さん。
 何とも素敵なご夫妻ですね。
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 「子羊もも肉のステーキ ハーブ風味」
 これもこの美味しさにしては破格の値段設定です。やわらかくジューシーでハーブの香り高い。つけあわせのラタトゥーユも美味。トウモロコシさえ驚く美味しさ。これはきっと山梨の新鮮な食材なのでしょう。
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 「信玄鶏のコンフィ ミルプラ風」
 ご主人が目の前で骨から外し、取り分けてくださいました。その手さばきも、やはりクールでかつ美しい!ウィットに富んだ会話も交えながら。
 コンフィは皮がぱりっとしてクリスピー。肉はやや塩分が濃いですが、噛むほどに旨味が口中に広がります。ワインのお供にぴったりです。
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 窓からの景色は徐々に暮れ、ブドウ畑は闇に沈んでゆきます。刻々と変化してゆく情景もこのお店のプレゼンテーションの一つ。じっくりと楽しめます。

 

 「クレームブリュレ」
 濃厚で香り豊かです。サイズもかなり大きく、カリテ・プリに優れます。
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 「バニラアイスを包んだクレープ フランボワーズ・ソース」
 ご主人が目の前でブランデーを使ってフランベしてくださいました。照明が落とされ、青白い炎が流れておちてゆく。幻想的で目にも美味しい妙技でした。コーヒーも香ばしく美味。
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 以上、心からくつろげるディナーを満喫しました。
 
 山梨のワインも、最近は世界にむけ発信・輸出しはじめたようです。そういう新たな食文化とともにさらに発展していってほしいお店です。



 
by musignytheo | 2011-07-14 21:21 | wine | Trackback | Comments(0)


Wine and Roses, Dalmatian and Labrador.


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