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Anna Karenina

トルストイの「アンナ・カレーニナ」を読みました。


 題の印象から恋愛論・家族論が主体かとかかって読みはじめたのですが、視点が多岐にわたり、社会全般を俯瞰しながら同時に細部に深く切り込んでいくような内容でした。
 自然や動物の描写に息をのむすばらしいところもあって、1700ページの大作とはいえ、立ちどまり読みかえし、言葉を文章を撫でまわし、緻密に打ちこまれている思想を自分の心の底にため込んだものと照合したりと手間のかかる読書で、三週間を費やしてしまいました。
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 だいぶ以前、昭和50年代の吉行淳之介と北杜夫の対談を記事で読み、その中で吉行さんが、「『戦争と平和』はすばらしい。でもその後で読んだカチューシャ(「復活」のこと)と『クロイツェル・ソナタ』はいけない。センチメンタルがどうも苦手でね」と語っていたのがずっと頭に残っていて、それが何となくこれまでトルストイに手をださない遠因となっていたようです。
 しかし、偶然手にとった光文社古典新訳文庫の「イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ」が全く悪くなかったので、「アンナ」に触手を伸ばすことにしました。


 ドストエフスキーは、この小説を「非の打ち所のない文学作品で、現代ヨーロッパにおいて比肩するものがない」とまで絶賛したそうです。
 レーニンも、「トルストイはこの小説のなかでリョービンの口を借りてこの半世紀におけるロシア史の峠がどこにあったかを明白に表現した」と褒め、本が擦切れるまで読み込んだそうです。


 「復讐はわれにまかせよ、われは仇をかえさん」
 冒頭におかれた聖書の言葉は、読了したときにはじめてその意味するところが理解できました。
 自分のこころに誠実に生き、結果として不倫というかたちでキリスト教的道徳を犯したアンナ。
 彼女をまっていた破滅が必然であったわけが印象強く書かれています。
 一方、貴族社会の細緻な描写は、一見真っ当に生きている人たちでさえ数々の罪を犯していることを暴きだしている。
 そんな貴族社会から徹底的な迫害を受けるアンナ。
 しかし罪人に制裁を加えることが出来るのは神のみであるとトルストイは訴えているようです。


 裕福な貴族でありながら農村で実直に生きるリョービンは、常に「私は何者であるのか。何のために生きているのか。死ねばすべての命は消滅し、完全な無に帰するのか」と自問し、答えを得られず苦悶しつづけます。
 自殺さえ考えるしまつです。
 これは、唯物論によってこころが掻き乱され不安定になってしまうようすを文学という形式で表現しているのでしょう。
 幸せな結婚、子供の誕生、多忙な農村での仕事と日常は死の考えに熱中することを遮ります。
 しかし気持はまぎれても、こころのしこりは解決されません。
 最終編で農民が語った言葉、「正直に、神様の掟どおりに生きることです」にリョービンは強いインスピレーションを与えられます。
 すなわち、百姓の言ったことは理性のフィルターを介さずに直接こころに達し、それはどう分析しても生まれながらにして自らに備わっていた真理であると。
 これまで哲学書に読みふけっても全く解決されなかったことが、たちどころにこころに落ちた様子が描かれていますが、トルストイもそんな体験をしたのかもしれません。


 ところで、キリスト教的博愛を訴えるトルストイと弁証法的唯物論のレーニン。
 相容れないように思うのですが、トルストイがこの小説で示したような「ロシアの知識人の無力と無意味さ」を立証することがロシア革命の理論的裏付けの一つとしてレーニンには必要だった、ただその一点だけでトルストイを利用した、という内容の論文がウェブ上にあり、そうかも知れないなと思いました。


 「アンナ・カレーニナ」は恐るべき小説だと思います。
 私には賛美する適切な言葉さえ見つけられません。
 でも強いてあらわせば、これは音楽に例えるとバッハの「マタイ受難曲」であると。
 すべてがそこに書かれているのです。
 私にとってはこれ以上の賛辞はありません。。。


 しかし難しいのは、好きか好きでないかという単純な問いに対する答えです。
 私はドストエフスキーが好きです。
 亀山先生のカラマーゾフ新訳以来、世間ではドストエフスキーのブームがつづいているようですが、それはよく理解できます。
 ドストエフスキーは現代の予言者とまで言われ、あがめられているようですが、確かに今読んで面白い。
 何度読み返しても倦むことがなく新たな発見があります。


 最近連合赤軍の首謀者が獄中死しました。
 一つの思想(と言って良いのか分かりませんが)の終焉を感じました。
 暴力に依存したプロレタリアート独裁で、権力を永続的に維持しようとしたレーニン的オプティミズムが誤っていたことは、ペレストロイカ以降の多くの史実が証明しています。
 ドストエフスキーの「悪霊」は、そういう視点から見ると、確かに「予言」だったのかもしれません。
 でも弁証法的唯物論がなかったら、今日の科学の発展はなかったとも思うのですが。


 ドストエフスキーに関する研究会はどこも盛況で、いまだにその数も増えつづけているそうです。
 しかしトルストイの方は、ウェブで調べるかぎり情報が少ない、とくに日本語での情報の少なさは際だっています。


 読書としてはドストエフスキーのほうが面白いかもしれませんが、私はこんな時代こそトルストイに着目したいと思うのです。
 みんながトルストイを再読したら、ちょっと世の中が良くなるような気がするのですが、間違っているでしょうか。
 若者や子供たちに純粋なセンチメンタルなこころを取りもどして欲しいのです。。。いや、私たちおじさん、おばさんこそ。
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by musignytheo | 2011-02-28 19:14 | essay | Trackback | Comments(0)

Clos Saint Andre

1995 Châteauneuf-du-Pape, Clos Saint Andre

 熟成を感じるオレンジがかったガーネット色。澱は少量。
 熟成香主体だが、いまだカシスやチェリーのリキュールのような凝縮した果実香も残っていて若さが感じる。ナツメグ、キャラウェイ、丁字、甘草などの様々なスパイス香となめし革、枯れ葉、シガー、スーボワのような熟成香が調和している。
 アタックに酸の力強さを感じるものの、すぐに円熟したまろやかな味わいが取って代わり口中を占める。驚くほど旨味成分が豊かなため、香りは華やかでも重心が低い。アフターにはチョコレートのような甘苦いニュアンスがある。期待を遥かにこえるワイン。以前とあるグラン・メゾンで飲んだ Chapuitier の Barbe Rac を想い起こしたほど。
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 栗とベーコンのリゾット
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by musignytheo | 2011-02-25 19:16 | wine | Trackback | Comments(0)

Stereo System

雪で馬場が使えないようで、この頃乗馬が出来ません。
バラの作業も一段落して、ブログのネタが切れてしまいました。


そこで今日は、音楽のこと。

Nも私も音楽を聴くことが好きなので、10年くらい前、リヴィングにステレオ装置を設けました。

まずはスピーカーから。
大きくてじゃまなのですが、オーディオセンターのリスニングルームで試聴して聞き惚れてしまい、これしかないと決めた物です。

Tannoy G.R.F. Memory
イギリスの会社の製品です。
最新鋭の高解像度でダイナミックレンジの広大なスピーカーとは違って、高音は出ません。
鋭い立ち上がりとか、リアルな表現というのも苦手です。
この機のよさは、人間的でやわらかく、例えばヴォーカルに弦楽器に温もりやなまめかしさがあることです。
定位が良く、現実の音よりも自然に聞こえ、聞き飽きないことです。
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スピーカーは一個に見えますが、中心部にツィーターが組み込まれていて、2ウェイです。
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アンプは、旧式な真空管を使った物です。
これもやはり、高解像度や高密度を狙ったものでなく、温もりや肌触りの良さを求めた機械です。

Luxman SQ-88
ジャズヴォーカルを、時にぞっとするようななまなましさで聴かせてくれます。
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CDプレーヤーは
DENON DCD-S10ⅢL
信頼できる日本製。
しかしあまりに優等生で退屈することがあります。
重心のしっかりした密度の濃い音を鳴らします。
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音楽は、おおよそクラッシック5割、ジャズ4割、ロック1割です。
ハードロックをこの装置で聴くのも、また一興です、笑。
意外と、いけます。
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by musignytheo | 2011-02-24 19:43 | classical music | Trackback | Comments(0)

Jean-Marie Guffens

2003 Mâcon-Pierreclos Premier Jus de Chavigne, Guffens-Heynen

 抜栓時コルクが折れてしまった。下端に近いところで割れたため回収もできなかった。近頃記憶にない出来事だったが、デキャンタージュで何とかしのいだ。
 微かに黄緑をおび輝く黄金色。ねっとりと粘度が高いことがグラスのエッジを落ちてくる液体の様子から見てとれる。
 香りを利く。まず豊穣なミネラル感に驚く。それも湿った石灰、焼けた石、石英、苦土など複雑性と強靭さを兼ね備えている。次にさまざまな果実の凝縮した香りが鼻腔を覆う。洋梨やネクタリンのジャム、アプリコット、マンゴー、ブラッドオレンジ、パイナップルのキャンディー。オレガノ、タラゴン、タイムなどのハーブなども感じる。この濃縮感や複雑さは、ボーヌの偉大なワインと何ら変わらない。
 味わいは、2003年にもかかわらず酸がしっかりと持続し、ミッドの焦点もぴたりと定まり、アフターの余韻はことさら長い。
 このワインは3度目だが、いつも新しい驚きと発見がある。ブラボー。
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 帆立貝のポワレ ハーブの風味
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 グラタン・ドフィノワ
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by musignytheo | 2011-02-21 19:23 | wine | Trackback | Comments(0)

Blueberry Muffin

Blueberry Muffin (ブルーベリー・マフィン)

                          by N
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マフィンのレシピは数多くありますが、この藤野真紀子さんのレシピが一番気に入っています。
サワークリームの爽やかな酸味、コーンスターチ由来のほろほろとした触感が、他にはない絶妙な味わいをつくっています。
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by musignytheo | 2011-02-19 19:33 | baking | Trackback | Comments(0)

Winter Rose Care 6

Fantin Latour (ファンタン・ラトゥール)


 東向きの壁に這わせてあるため、午後は日光が当たりませんが、そこそこの大きさに育ちました。
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 オールド・ローズらしく、春の一期咲きです。
 棘が少なく、扱いやすいバラの一つです。
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 花の形が乱れやすく、きれいな正円になる花はほとんどありません。
 それがかえって可憐さ繊細さに野趣を添えるようで、魅力の一つになっている気もします。
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 やわらかいオールドローズ香がします。
 カップ咲きからクウォーター・ロゼットへの変化が楽しめます。
 フランス風の雰囲気をもったバラだと思います。
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 我が家のバラの番犬は、テオです!
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by musignytheo | 2011-02-17 19:42 | rose | Trackback | Comments(0)

Chambolle-Musigny

2002 Chambolle-Musigny, Louis Jadot

 ほんのりと紅茶色を帯びたガーネット色。澱はない。
 ミュールやダークチェリーのコンフィ(果実香は黒っぽい)、ティーローズのドライフラワー、なめし革、シガー、湿った枯れ葉。エスプレッソがまだ少し残っている。
 味わいは、まずシャンボールらしいしっかりとした酸やミネラルを感じるが、すぐにやわらかく深い旨味、ボリューム感が支配的になる。可憐なシャンボールという印象はなくふくよかで味わい深い。これはどうやらテロワールというより作り手であるJadotの個性と言えそうだ。
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 甲州地鶏とモリーユのトマトクリーム煮
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by musignytheo | 2011-02-16 19:08 | wine | Trackback | Comments(0)

Winter Rose Care 5

Graham Thomas(グラハム・トーマス)


 これも、カミキリムシに害されました。 
 何とか二年目の枝も使って仕立てましたが、さてきちんと咲いてくれるか?
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 やや黄緑がかったやわらかい緑の葉は、とてもヴィヴィッド。
 ステムが比較的しっかりしているので、花は垂れず凛と咲きます。
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 初期のイングリッシュ・ローズですが、いまだにその魅力は褪せないばかりか、他のどのバラもこの美しいイエローを凌駕できずにいると思います。
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 バナナのニュアンスをもったティーローズ香。
 花弁は多すぎず少なすぎず。
 抑制された開き方、花弁の形の穏やかさ、中心部の乱れ方、どれもがちょうど良い。
 これらの微妙な均衡が美しさの根源だと思っています。
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by musignytheo | 2011-02-15 19:14 | rose | Trackback | Comments(0)

Winter Rose Care 4

 やっと先週、冬の庭仕事が終わりました。
 剪定、誘引のあと元肥を施し、石灰硫黄合剤とマシン油で消毒しました。



Evelyn (エブリン)

 私にとって欠かせないバラの一つです。
 カミキリムシで弱ってしまったので、充分根元を耕して空気を含ませ、完熟油粕、骨粉、苦土石灰、籾殻の灰などを施肥しました。
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 誰からも愛される新鮮で優雅な芳香は、庭一面をその香しさで満たす力強さをもっています。
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 四季咲き性旺盛で、晩秋まで何度も返り咲いて楽しませてくれます。
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by musignytheo | 2011-02-14 19:00 | rose | Trackback | Comments(0)

Theo and snow day 2

こんばんは。
ぼく、ておでしゅ。
きょうは、いいおてんきでしたね!
ぼくのゆきのひ、だいにだんでしゅ。。。
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いつものぱーかーから、きいろいかっぱに、きがえたんでしゅよ。
ちょっとさいずかおおきいので、ままが、せんたくばさみで、とめてくれまちた。
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でもやっぱり、ゆきのひは、さむいでしゅね、、、
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はしっていたら、つめたくて、あしがしんしんいたくなりまちた。。。
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かあちゃん、おうちにかえりたいよおぅ!!
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きょうは、いいおてんきで、あったかでちた。
やっぱりぼくは、ひなたぼっこがだいすきでしゅ。
ではみなさん、おげんきで〜。。。
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by musignytheo | 2011-02-13 19:55 | dog | Trackback | Comments(2)


Wine and Roses, Dalmatian and Labrador.


by musignytheo

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