Postoperative day 1

 術後一日目のミュー。
 無欲であきらめきった眼差しです。
 眉間の縦じわなど見せたことのない子なのに。
 苦痛に表情が歪んでいます。
 からだに何が起きたのか、なぜ胸やお腹に痛みがはしるのか、どうして呼吸が苦しいのか分からないようです。
 すわって体を落ちつけようとしても、脚がふるえてじっとしていられません。
 伏せをして、少し目を閉じたかとおもうと、すぐに小声で苦しそうに鳴き、またからだの位置を変えます。
 獣医さんのお話では直前にモルヒネを使ってくださったようですが、Nは正視できません。
 「しっかり見ておくんだ、記憶しようよ、ミューの姿を・・・」
 この姿を脳裏に焼きつけて、元気になったミューとどんな暮らしができるのか、何がしてあげられるのか考えようよ。
 
e0163202_112559100.jpg



 これ以下は、情報として手術時の写真を掲載いたします。
 自信のない方は、ご覧にならないでください。















 手術の経過をご報告いたします。
 11月6日、18時30分から全身麻酔導入。
 胸腹部を悌毛したあと、左胸腔にドレーンを挿入。残っている乳びを可及的にドレナージしました。
 側臥位で右第8肋間を開胸。乳びの漏出箇所は不明。幸い肺の臓側胸膜に肥厚はなし。しかし、心膜と前方の壁側胸膜は線維性にかなり肥厚していました。乳びの接触による炎症性変化と考えられます。
 3時間前からコーン油を飲ませておいたため、大動脈に接して白色の胸管が長さ3cmに渡って確認できました。大動脈周囲には全く炎症性変化はありません。犬の通常の体位を考えると背側の大動脈や胸管は乳びに接触しがたいので、炎症は起こりにくいのだと思います。(写真参照)
e0163202_11424016.jpg


 まず壁側胸膜を開け、大動脈を剝離。つづいて奇静脈の一部を剝離すると、胸管が周囲の脂肪組織を包んだまま遊離されました。解剖書と少し違ったのは、奇静脈と胸管は横隔膜側に近づくほど接近し、大動脈の左側にもぐり込んでいくようでした。
 胸管をできるだけ横隔膜側で、3-0 Prolineにて3カ所結紮。さらに分枝と思われる策状物2本もヘモクリップで閉鎖しました。この操作は、案外難しくありませんでした。
(結紮部位の写真は残念ながらピンぼけでした)

 次に心膜に目を移すと、上記のごとくかなり線維性に肥厚していました。注意深く剝離。はじめepicardiumと癒着しているように見え緊張しましたが、幸い癒着はなく、右室の前面を大きく解放しました。絞扼されていたのか、心膜を開くと右室が飛びだしてくるような印象を受けました。それにしても心膜の厚さは約3mmもありました。

 最後に後ろ脚を解放して thoracoabdominal positionにし、上腹部を10cmほど正中切開し、胃の左右から大網を一部はずし、短冊状のpedicleを作成。右胸腔側から横隔膜の前方正中に直径3cmほどの穴をあけ、大網を胸腔内に誘導。胸管結紮部から心尖部付近に広く分布させて、吸収糸数針で固定。万一乳びが止まらなかった場合を考え、大網のリンパ液吸収作用に期待して、physiological drainとしました。
e0163202_1273733.jpg


 腹部を閉じ、胸腔ドレーンを挿入後、胸の創も閉鎖して手術を終了しました。
 麻酔からの覚醒は順調でした。

 開胸・開腹と侵襲が大きくなりましたが、考えられる対処法はすべてやりとげることができました。
 麻酔も含め獣医さん4人とスタッフの方3人が手術に入ってくださいました。
 心から感謝しております。


idiopathic chylothorax, dog, thoracic duct ligation, pericardiotomy, omental flap, omentum
 
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by musignytheo | 2009-11-08 12:12 | chylothorax | Trackback | Comments(0)
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